米中貿易戦争の原因・米国の真の狙いを安全保障の観点から分かりやすくまとめて解説してみた

米中貿易戦争の原因・米国の真の狙いを安全保障の観点から分かりやすくまとめて解説してみた

米中貿易戦争の背景

米中間には巨額な貿易不均衡が生じており、それを是正すべきことは両国間で一致していますが、その原因やアプローチについて、両国の考え方は一致していません。

 

交渉は上手く行かず、米国は一方的な貿易制裁措置という極端なアプローチで中国に譲歩を迫っているが、中国も対抗措置を発表して、貿易紛争の度合いが増してきているというのが一般的な米中貿易戦争を巡る背景として認識されています。

 

そして、米中貿易戦争というと、それがもたらす日本、株価、為替などの影響について論じられることが多く、米中でどのような措置が取られているとか、経緯や今後取りうる措置、経済的にはどんなインパクトがあるかということについて解説している記事は多く見かけますが、この問題を安全保障的な側面から考察しているものは極めて少ないという印象を持ちました。

 

そこで、今回の記事は米中貿易問題は実際には安全保障上の問題に起因しているという切り口で頭の整理をしていきたいと思います。

 

大別すると2つの要因があると考えられます。

① 貿易問題よりも中国の競争力を削ぐことを狙った措置

米中貿易戦争がマクロ的にどう影響を及ぼすかなんて私には分かりませんが、今回の米国の措置は、明らかに米国の軍事・経済覇権が揺らがないように中国の競争力を削ぐことを狙った措置であるということは分かります。

米国の国家安全保障戦略

2017年末に発表された米国の国家安全保障戦略において、米国の軍事・経済的優位性が中国に奪われつつあることに対する警戒感が読み取れることからも間違いないと思います。

 

すなわち、今回の関税措置の応酬は貿易問題という形式を取りながら、実際は安全保障上の米国の危機感が浮き彫りになっている形になっています。

 

国家安全保障戦略において、中国については、「技術、宣伝および強制力を用い、米国の国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力」と言及しており、厳しい対中認識を提示しています。

 

具体的には、

  • 中国は経済的、軍事的手段で、他国の政治や安全保障に圧力を掛けている
  • 中国のインフラ投資や貿易戦略は、地政学的な野心を強固にしている
  • 南シナ海では自由な交易を危うくする等、地域の安定にとって脅威になっている

 

などと中国に大して文句を言っています。

 

このように、米国の国益や価値観と対極にある世界の形成を目指す修正主義勢力として、中国の国力を衰退させたい米国の思惑が窺えます。

 

余談ですが、グーグルで米中貿易戦争と検索したら次に続く言葉として「中国崩壊」と出てくるのにはさすがに驚きました

② 中国製造2025に対する米国の安全保障上の脅威

もう一つの側面として、米国は、中国製造2025が米国のハイテク産業の優位性を損ない、経済に影響を与えることを恐れ、安全保障上の脅威として認識をもち、これに対抗する措置として米中貿易戦争を行なっているものと考えられます。

 

米国の制裁措置案は、既存の貿易製品からハイテク製品へシフトし、未来の産業を育成する産業政策「中国製造2025」をターゲットとしています。

 

米国は建前では、中国が「中国製造2025」という産業政策を通じて不公正な補助金によって対象産業の過剰生産能力を形成したり、市場取引によらない海外技術の獲得をサポートしたりすることを批判していますが、米中貿易摩擦の原因は貿易不均衡よりも次世代産業技術をめぐる覇権争いという背景があるとみられます。

 

この点、2018年4月16日に米商務省が、対イラン制裁法令に違反した社員を処分する約束を履行していないという理由で中国の大手通信機器メーカーZTEへの部品輸出を禁ずる行政措置を取りましたが、米中貿易紛争がエスカレートしている時期と重なり、米国の禁止措置は対中ハイテク産業を狙ったものであるとの見方が中国では一気に広がりました。

 

では、米国が恐れる中国製造2025とは一体どのような政策なのでしょうか?

中国製造2025とは?

「中国製造2025」とは、2015年5月に中国政府が発表した中国における今後10年間の製造業発展のロードマップです。

 

その計画は、具体的かつ体系的であり、「5つの基本方針」と「4つの基本原則」に則って、2049年までにやるべきことを3段階で明記しています。

第1段階

第1段階としては、2025年までに「世界の製造強国入り」を果たす。

 

この第1段階が現在中国政府が推進している「中国製造2025」です。

第2段階

第2段階として2035年までに中国の製造業レベルを、世界の製造強国陣営の中位に位置させる。

 

第3段階

第3段階として、2045年には「製造強国のトップ」になるという目標を掲げています。

 

図2 国情・現実に立脚し、3段階で製造強国の戦略目標を実現

5つの基本方針

中国製造2025では、既存の問題を解決し、新たな発展を推進するために、以下の5つの基本方針を掲げています。

 

  • イノベーション主導
  • 品質優先
  • グリーン発展
  • 構造最適化
  • 人材重視

 

表5 「中国製造2025」の基本方針(5つの方針)

 

出所 日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所 真家陽一、「中国の経済・政策・ビジネス環境の最新動向」

 

4つの基本原則

 中国製造2025の第1段階は、以下の4原則の下に推進されています。

 

  • 市場が主導、政府が誘導
  • 政府に立脚、長期に着眼
  • 全体的に推進、重点的に躍進
  • 自主的発展、開放強化

表4 「中国製造2025」の基本原則(4つの原則)

出所 日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所 真家陽一、「中国の経済・政策・ビジネス環境の最新動向」

今後の行方

まとめると、今回の米中貿易戦争は、国家安全保障戦略でも示されているように、米国の国益や価値観と対極にある世界の形成を目指す修正主義勢力として位置付ける中国に対する警戒感から、貿易問題という側面よりも中国の競争力を削ぐことを狙った措置である可能性が高いこと、中国製造2025が米国のハイテク産業の優位性を損ない、経済に影響を与えることを恐れ、安全保障上の脅威として認識をもち、これに対抗する措置として米国が米中貿易戦争を仕掛けているものと考えられます。

 

米中貿易戦争は、こうした安保戦略上の下に行われていると考えられること、米国では50%くらいが米中貿易戦争に不支持を表明していますが、トランプ大統領の支持基盤である共和党は70%近い支持を表明していることから、中間選挙を控えてここらで収束するとは考えにくいのではないでしょうか?

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