【空売り比率が上昇傾向】空売り比率40%超えが常態化した要因とは?

【空売り比率が上昇傾向】空売り比率40%超えが常態化した要因とは?

空売り比率が上昇傾向

わずか半年ほど前の話ですが、2018年3月23日に東証空売り比率が「50.3%」となり、3月2日の48.8%を上回り、市場筋によると過去最高を更新しました。

最近では空売り比率が上昇傾向にあり、よく気にする指標として認識している人も多いかもしれません。

実際、「買戻しのマグマが溜まっている」、「売り豚を焼き尽くしてくれ」、「空売り比率高いけど、売ってる人大丈夫?」等といったコメントを見かけることもよくあります。

最近は空売り比率40%以上が常態化するなどしていますが、今回は空売り比率の意味について、賢い人々から学んだことを自分自身の備忘録も兼ねてまとめるとともに、空売り比率が上昇している要因について4つの見解を提示します。

結論を申し上げると、信用取引の規制緩和、アップティック・ルールからトリガー方式へと空売り条件緩和、日銀のETF買い入れ予算増額、機関投資家のための自己売り決めなどが影響している可能性があります。

以下、それぞれ具体的にみていきます。

空売りの意味

まず、空売りの意味からですが、多くの人は当然把握していると思いますので読み飛ばしてください。

空売りとは信用取引の売りのことで、最初に株式を借りてきて市場で売り、株価が上下に動いた後で市場で買い戻して差益を得る取引のことです。

例えば現在1000円の株式があり、この株式がなんらかの理由でこれから下がるだろうと考えて空売りを仕掛けます。

結果900円に下がれば100円分の利益が出ていますし、1100円に上ってしまうと100円分の損が出るということになります。

買いの場合には損失は限られていますが、空売りの場合には損失が無限定とよく言われます。

空売り比率の意味

次に、空売り比率ですが、これは株式の信用取引において、空売りされたまま買い戻されていない株数の比率のことをいいます。

一般に、空売り比率は、空売りされている株数(売残)を、その株の30日あるいは90日間の平均出来高で割って算出することが多いとされています。

通常、株式市場では、空売り比率が上昇すると、ショートカバー(空売りの買い戻し)の期待が高まることから、株価の上昇のきっかけとなることがあるとされています。

今でこそ空売り比率40%台は頻繁に見受けられますが、数年前までは「30%」くらいを超えると警戒域とされていた模様です。

直近の空売り比率の状況(2018年9月17日現在) 日経平均先物 CME SGX 大証 夜間 リアルタイムチャート 引用

空売り比率の定義についての解説

以下の記事により詳しく空売りの定義が解説されていましたので、参照させてもらいました。

2014年以降、マーケットアナリストなどが「空売り比率が高まっているから株式市場は反転する」といったコメントをしているのをよく耳にするようになりました。

おそらくこのようなコメントをしている人は空売り比率の定義を勘違いして「出来高に対して信用売り残がどれくらい残っているか」と解釈しているはずです。

計算式にするとこのようなイメージです。

  • (間違った)空売り比率=信用売り残÷1日の出来高×100

たしかに昔はこのような基準でみている人もいたように記憶していますが、少なくとも2008年から東証が日々公表している「空売り比率」はそのような定義ではありません。

現在、東証が公表している空売り比率とは1日の売り注文合計(売買代金)に占める空売りの比率です。

計算方法は、まず一日の売り注文を「現物の売り」と「信用の売り(空売り)」に分けます。

合計の売り注文の金額(=売買代金)に対して「信用売り(空売り)」の金額のがそれくらいの割合かを計算します。

計算式にするとこのような形です。

  • (正しい)空売り比率=信用売り金額÷合計売り金額(=売買代金)×100

それでもなんとなく空売り比率が高いと将来買い戻される株式が多くなるというイメージで、株価の底入れの目安になりそうな気もしますが、実際には違うので注意が必要です。

 

「空売り比率」の意味を間違えていませんか?

空売り比率は価格規制ありと価格規制なしの2つがある

空売りをやる人は知っていると思いますが、空売り比率には価格規制ありと価格規制なしの2つあります。

  • 価格規制あり ヘッジファンドが空売りしている分
  • 価格規制なし  個人投資家や裁定取引の分 

この価格規制というのは、主にアップティック・ルールのことを指します。

これは直近の株価よりも高い水準でなければ空売りができないというもので、下図がそのイメージになります。

価格規制の適用対象がヘッジファンドが空売りしている分となっていることからも明らかなように、アップティック・ルールは株価下落局面におけるヘッジファンドなどによる相場の売り崩しを防ぐための措置でした。

空売り比率上昇の要因と考えられるもの

ここからが本題です

① 信用取引の証拠金規制が緩和

2013年1月から信用取引の証拠金規制が緩和され、従来は「信用買い→売り」で決済しても証拠金を使い回すことはできませんでしたが、1日何回転でも売買できるようになりました。

例えば2012年までは、委託保証金100万円を証券会社に差し入れて信用取引で300万円の株を購入した場合、信用の余力はほとんどなくなっていました。

当日中にその株を全部売却しても、余力は回復せずにその日のうちに再度300万円の買付を行うことはできませんでしたが、2013年1月からは、売却後に余力がすぐに回復し、その日のうちにまた取引ができるようになっています。

図で示すと以下のようなイメージです。

つまり、信用取引であれば無制限に何度でも売買が可能となりましたので、売買代金に占める信用取引の割合が増加しました。

これにより「空売り→買戻し→空売り→買戻し」を繰り返して行った場合、売買代金に占める空売りの割合が高くなることから、空売り比率を高める要因となっている可能性があります。

② アップティック・ルールからトリガー方式へと空売り条件緩和

2013年11月5日以降、このアップティック・ルールにより市場の流動性が低下してしまっているなどの理由から、トリガー方式へと空売りの条件が緩和される制度変更がありました。

トリガー方式とは具体的には、株価が前日終値より10%以上下落した場合という特殊な状況でのみアップティック・ルールが適用されるというものになります。

イメージとしては従来は直近価格より少し上で指値をするしかありませんでしたが、改正後は現物の注文と同様に特に何も気にすることなく空売りの注文を出せるようになり、これにより空売りの利便性が格段に高まりました。

図で示すと以下のようなイメージで、株価が前日終値より10%以上下落した場合という特殊な状況でのみ上述したアップティック・ルールが適用されます。

ちょうど制度改正の直後から空売り比率が大きく上昇し、その後右肩上がりとなっていることから、この改正は空売りの増加に大きく影響を与えていると考えられます。

ファイナンシャルスター 引用

③ カブタンの解説 日銀がETF買い入れ予算を増額

カブタンでは、上記の空売り規制とは異なる「日銀のETF買い入れ予算増額」を理由として指摘しています。

少し長いですが、以下は引用です。

3月23日、空売り比率は50を超え、過去最高を更新した。
空売り比率は数年前まで、「30」を超えると警戒域とされていた。
警戒域とされる基準の変化が起きたのは「空売り規制」の変更が理由と言われているが、筆者の実感では、日銀がETF買い入れ予算を増額してきたころと重なっている。

日銀がETF買いを続けることで多くの企業で実質的な大株主となり、その分だけ株式市場の浮動株数は減少している。
浮動株が減少した一方で、機関投資家や海外投資家はこれまでと同様の予算で日本株を取引しており、それが日経平均のボラティリティーを大きくしている可能性が高いのではないか。

この仮説の裏付けを取るべく、日本取引所の発表する「空売り集計」から

2016年初めと直近を比べてみた。

          空売り額   空売り比率
  2016年1月29日 1兆8307億円   37.8%
  2018年3月23日 1兆8040億円   50.3%(空売り(価格規制あり))
  ※「価格規制あり」は機関が空売りしている分のこと。

機関の空売り分について見ると、空売り額は2016年1月も2018年3月も大きくは変わらず、むしろ2016年の方が300億円近く上回っている。

それにもかかわらず、空売り比率は2016年1月の37.8%に対し

2018年3月は50.3%と大きく上回っているのだ。

これが意味することは何か? 
機関投資家や海外勢による日本株への投資予算はそれほど変わっておらず、浮動株数が減った分、過去と同様の売買でも株価の変動が膨らみやすくなっていると考えられる。

つまり、海外勢は、日本の政治状況などに懸念を抱いて日本株を投げ売っているわけではない、と言えるのではないだろうか。

●高水準“空売り比率”が映す真実は
報道では、「空売り比率が過去最高を更新」「歴史的に見て空売り比率が高水準」とった文言を見かける。確かに株価が下げているのだから、買いよりも売りが優勢なのは間違いなく、部門別売買状況を見ても売り越しは積みあがっている。

しかし、機関投資家や海外勢がここから先の大きな暴落を懸念して一方的に空売りをしている状況でないのであれば、空売りの買い戻しによる大幅な反発局面は近いとも考えられる。空売り比率こそ高いが、1日あたりの空売り金額そのものは膨らんでおらず、売買を手控えるような水準ではない。目を凝らして空売り比率の本質をみつめれば、先安感に覆われたはずの日本株が違う姿で浮かび上がってくる。 

④ マキにゃん(19)さんの解説 機関投資家のための自己売り決め

検証する術はないものの、機関投資家のための自己売り決めが影響しているのではとの見解を示している方もいらっしゃいました。

 

まとめ

検証する術がないので要因を特定することは容易ではありませんが、空売り比率が上昇した要因としては、信用取引の規制緩和、アップティック・ルールからトリガー方式へと空売り条件緩和、日銀のETF買い入れ予算増額、機関投資家のための自己売り決め等、いくつかの要因が複合的に影響しあった結果といったところでしょうか?

また、参考になるタイミングもあるとは思いますが、現在東証が公表している空売り比率は必ずしも将来買戻しされるポテンシャルを表すものではない可能性があるということも示唆されました。

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