【まとめ】韓国海軍によるレーダー照射問題の疑問点を分かりやすく解説し、韓国側の主張の矛盾点を分析・検証してみた

【まとめ】韓国海軍によるレーダー照射問題の疑問点を分かりやすく解説し、韓国側の主張の矛盾点を分析・検証してみた

文政権が、歴史問題と日韓協力は切り分けて推進するツートラック外交を打ち出して以降、日韓関係の問題が表面化することはありませんでしたが、2018年10月に徴用工問題を契機として大きく冷え込んだ日韓関係をさらに悪化させる韓国海軍艦艇によるP1哨戒機に対するレーダー照射事案が生起しました。

 

国際問題に精通している方ではないと、韓国の主張が矛盾していることは分かっても具体的に今回の行為の何が問題となるかなど、問題の本質がよく分からない方もいると思いますので、過去に国際情勢のアナリストの経験のある私が1次資料である両国の政府公式発表等を基に調べたものを分かりやす解説します。

問題の所在

韓国側の報道が二転三転したりと情報が錯綜していますが、問題になっているのは日本海の排他的経済水域(EEZ)内で海上自衛隊のP1哨戒機が韓国海軍の駆逐艦からレーダー照射を受けたか否かです。

 

防衛省では、20日のレーダー照射事案の発生後、海自P-1の機材が収集したデータを基に韓国海軍駆逐艦から発せられた電波の周波数帯域や電波強度などを解析した結果、海自P-1が、火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認したと公式発表しています。

攻撃のシミュレーション・海上衝突回避規範(CUES)の規定に抵触

では、なぜ火気管制によるレーダー照射が問題となるかといえば、レーダー照射とは、攻撃のシミュレーションと捉えられる戦争の引き金となりかねない危険な行為であり、訓練ならともかく、予告なしの照射はあり得ない行為なのです。

 

イメージがわかない方はこの写真を想像してください

さらには、日本や韓国など21カ国が2014年に採択した海上衝突回避規範(CUES)の規定に抵触することも問題となります。

 

2013年1月に起きた中国の火器管制レーダー照射事件を受けて、中国も参加させてこうした国際合意を締結しました。

 

ここでは法的拘束力はないものの、火器管制レーダーの照射を回避すべき行為として決めており、今回の行為は、韓国の明確な国際合意違反と言えます。

 

さらに合意では、「無線で行動目的を伝え合うこと」を決めていますが、今回P1の意図確認に対して、韓国は感度不良を理由として行動目的を伝えませんでしたのでこれも国際合意違反です。

 

これまでの韓国側の対応を踏まえると、仮に意図的に火気管制によるレーダー照射をしていたとしても、人道主義的な遭難船の救助で運用しており、攻撃のシュミレーションではないからCUESの規定に抵触しないと考えていると推測されますが、これは法規の解釈が間違っています。

中国の行動を後押ししてしまう懸念

今回の事案を有耶無耶にしてしまうと、そもそも中国の火気管制によるレーダー照射を受けて結んだCUESの意義がなくなってしまい、韓国のせいで中国がやりたい放題になってしまうかもしれない懸念もあるので、日本としては、この合意が有名無実化しないためにも韓国に謝罪と再発防止を求める必要性があります。

 

韓国との外交関係が悪化するとかそういう小さな次元の話ではありません。

火器管制レーダーとは

次に、問題になっている火器管制レーダーについて概説します。

IHSジェーン軍艦年鑑2018-19によれば、韓国海軍の「クァンゲト・デワン」級駆逐艦は以下のレーダーが搭載されています。

  • 空中の飛翔体を360度捜索するSPS-49v5対空捜索レーダー
  • 水上及び低空を捜索するMW08レーダー
  • 空中の標的に狙いを定める火器管制レーダーSTIR180レーダー
  • 航海用のSPS-55Mレーダー

これらのレーダーや電波装置は、使用する周波数帯がそれぞれ異なっています。

 

防衛省がP1が探知したこれらのレーダーの周波数を公開すれば、韓国側は絶対に言い逃れできないのですが、これを公開すると、日本側の情報収集能力が明らかになってしまう恐れがあるので公開できない事情があります。

 

今回、問題になっている火気管制レーダーとは、MW08レーダーSTIR180レーダーの2つです。

以下の韓国国防部の定例ブリーフィングでもその点は明らかです。

:08、はい。

:はい、08で、次に射撃統制レーダーはSTIR180と認識してますが、この2つは使用目的が違います。しかし、日本側の主張はSTIR180をつけたということですか?

:はい、そうです。

:で、我々はつけたことがない、ということですか?

:つけたことがありません

MW08レーダー

海面の漁船を捜索していたのなら「クァンゲト・デワン」は、海面を遠くまで見渡せるようにマストの高い位置にある海面及び低空捜索・射撃指揮用のMW08レーダーを働かせていた可能性があります。

STIR180レーダー

標的となる敵の航空機に軍艦の火器管制レーダーから電波をあてて、その反射した電波をミサイルの先端にあるアンテナが受信して標的に向かって飛んでいくという仕組みのレーダーであり、標的を破壊するまで「クァンゲト・デワン」は、火器管制レーダーの電波をあてていなくてはなりません。

 

防衛省が公表している資料を見ると、STIR180レーダーを火器管制レーダーとして説明していることから、このレーダーを問題視している模様です。

事実関係の整理

レーダー照射の有無に対する韓国側の立場表明/時系列

こうした今回の問題の所在やレーダーの特徴を踏まえ、まず、事実関係の整理として、レーダー照射の有無に対する韓国側の立場表明を時系列で確認します。

韓国側の報道

  • 12月20日:日本「韓国からレーダー照射された」
  • 12月20日:韓国「レーダー照射してない」
  • 12月21日:韓国「日本政府は事実確認せずマスコミに伝えるな」
  • 12月22日:韓国「レーダー照射したけど遭難船探索のためだ」
  • 12月23日:韓国「我々の艦艇の上を飛行するなど日本が威嚇してきた」
  • 12月24日:韓国「やっぱりレーダー照射してない」

国防部の公式発表

韓国側の報道だけを見ると、レーダー照射を受けたか否かを巡って発言が変化していますが、韓国の公式発表としては、国防部が実施した4度の立場表明(21日の夜、岩屋防衛相の最初の記者会見の直後に国防部の記者団に向け送ったSMSの発言と24日の定例ブリーフィング、27日のブリーフィング、そして28日の防衛省の映像公開に対するブリーフィング)においては「日本の哨戒機の追跡目的でレーダー照射はなかった」という説明をしており、韓国側に立つわけではありませんが、厳密に言えばレーダー照射をしていないという当初の立場からは変化がありません。

 

ただし、韓国海軍の公式発表では、意図的なレーダー照射がなかったことを説明するためにいくつかの言い訳をしています。

 

  • 遭難船救助
  • P1哨戒機が危険な低空飛行を行った
  • P1哨戒機からの無線通信の感度が弱く聞き取れなかった
  • 火器管制レーダーは使用していないが、付随している光学カメラは使用した

 

ここからはこうした韓国の主張を防衛省が公表した動画を基に一つずつ分析・検証していきます。

分析・検証

① 遭難船捜索のためにレーダー照射してしまったとの主張

韓国国防部は、北朝鮮の遭難した漁船の捜索のためにあらゆるレーダーを使用していたと公式に説明していましたが、28日に防衛省が公表した動画からは、遭難船が既に発見されボートで救出している真っ最中ということが判明しました。

 

いかなるレーダーを発信しているとしても、P1にレーダー照射をした時には「捜索」のためではないことは明らかであり、韓国国防部の遭難船捜索のためにレーダー照射してしまったとの主張は成り立ちません。

 

また、この映像から、韓国艦艇がレーダーを使った広域の捜索活動は行っていない状態と推測できます。

② P1哨戒機が艦艇の上空を飛行するなどの危険な低空飛行を行った

韓国国防部の公式発表では、P1哨戒機が駆逐艦の上空へ危険な低空飛行してきたため、レーダーに付属している光学カメラを向けたが、レーダーを照射した事実はないと説明していたところ、

 

防衛省は、「海自P-1は、国際法や国内関連法令を遵守し、当該駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行しており、当該駆逐艦の上空を低空で飛行した事実はありません」と公式に否定しています。

 

その上で、以下で示す、今回の主張に関係する国際法や国内関連法令についてもHP上に掲載しています。

 

これらを踏まえ、防衛省が公開した動画を全て見てみたところ、韓国軍艦の真上を飛んだということもないことがわかりました。

 

ただし、船の認識番号を確認するため、横を飛んだのは間違いないようですが、これは艦番号(ハルナンバー)及び艦影の識別、撮影のために通過しているのであり、これは民間船舶に対しても実施されている通常の飛行です。

公開動画を見ると、防衛省の主張どおりに「一定の高度と距離をとって飛行しており、当該駆逐艦の上空を低空で飛行した事実」は確認できず、韓国国防部が主張するP1哨戒機が艦艇の上空を飛行するなどの危険な低空飛行を行ったという主張は成り立ちません。

 

ただし、危険な低空飛行はしていませんが、この映像を見ても韓国側は船の認識番号を確認するため、横を飛んだ時の飛行を危険な低空飛行と主張する余地は残ります。

 

実際、韓国は公開動画発表後に「人道主義的な救助活動に集中していたわが艦艇に日本の哨戒機が低空の威嚇飛行をしたことは、友好国として極めて失望的なこと」と発言しています。

 

本当の危険な低空飛行とはロシアがよくやるこういう飛行を言うんです()

他方で、日本のメディアのニュースもこうした合成の写真を掲載して動画を見ていない人を情報操作しようとするから悲しくなります…

こんな画像は防衛省公開動画にはなく、P1哨戒機が駆逐艦の上空へ危険な低空飛行してきたという韓国側の主張に合わせているかのようで気持ち悪くなりました。

飛行中に車輪が出るわけないじゃないですか…

③ P1哨戒機からの無線通信の感度が弱く聞き取れなかった

韓国国防部は、P1から無線通信があったというが「コリア コースト」とだけであり、また、 無線通信は感度が弱くとても聞き取れるものではなかったとし、哨戒機からの無線での確認に応じなかった理由を天候の理由で「通信強度が微弱だったため」と主張していたところ、

 

防衛省は「海自P-1は、国際VHF(156.8MHz)と緊急周波数(121.5MHz及び243MHz)の計3つの周波数を用いて、「韓国海軍艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で計3回呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みました」と公式に否定しています。

 

実際、公表されている動画を見ると、3つの周波数で「KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で呼びかけていることが確認できました。

公開映像で明らかにする前段階として、そもそも韓国は遭難船の救助のためにレーダーを全て使用していたと主張していましたが、視認できる位置にいるP1の無線を雑音混じりにしか受信できない段階で捜索活動なんてできません。

 

韓国側の主張に元海将の伊藤氏は「韓国側の主張が正しいと仮定するなら、軍艦として終わっている。その程度の通信能力だということになるので、恥ずかしくて言えない。おそらく、国際VHFというあの海域で国際的に使用できる16チャンネルだと思うが、思いっきりボリュームを上げているはず。ましてや事前に捜索を行っていると言っているので、それが機能していないというのはいかがなものか」とも述べています。

④ レーダーは使用していないが、付随している光学カメラは使用した

韓国国防部は、P1哨戒機が駆逐艦の真上を通過する「特異な行動」を取ったため、レーダーに付随した光学カメラを回して監視したが、レーダー照射はないと主張していましたが、

 

防衛省は、「海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断しています。その上で、火器管制レーダーは、攻撃実施前に攻撃目標の精密な方位・距離を測定するために使用するものであり、広範囲の捜索に適するものではなく、遭難船舶を捜索するためには、水上捜索レーダーを使用することが適当です」と公式発表しています。

 

この付属している光学カメラは使用したが、レーダー照射があったか否かという部分が最も重要です。

 

公開動画を見ると、当然のことですが、この映像には火器管制レーダーを受信した瞬間の音などは、軍事機密上の理由から削除されています。

 

強いレーダー派を連続して受信していることから、STIR180レーダーである可能性が高いことが分かります。

 

 

 

 

また、③の感度の項目とも関係しますが、このレーダー照射を受けてP1側は意図の確認に交信を試みています。

 

ただ、その確認内容については、「貴艦のFCアンテナが我々を指向したことを確認した。貴艦の目的は何か?」というもので、「火器管制レーダーを受信した。目的はなにか?」という内容ではありませんでした。

 

 

そのため、照射を受けたとするパイロットの動画はあり、日本人としては防衛省の主張の正しさが証明されたとの納得感はあるものの、韓国側としては、これが実際にレーダー照射を受けている証拠としては受け入れない理由となってしまっているものとみられます。

 

実際、韓国国防部は「相互誤解を解消するための実務級テレビ会議から1日ぶりに日本側が映像資料を公開したことに深い憂慮と遺憾の意を表明する」、「日本側が公開した映像資料は単純に日本の哨戒機が海上から巡回するシーンとパイロットの対話だけだ。一般的な常識からみると射撃統制レーダーを調査したという日本側の主張に対する客観的な証拠とはみられない」と述べています。

 

この点、防衛省は一般公開前に韓国側にこの動画を見せていますので、情報保全の観点から周波数を公開できないことを知っている韓国側は、日本が「軍事情報を公開することはありえない」と見切っているため、全く非を認める姿勢はなく、火器管制レーダーの周波数の特性を一つも公開していないから、レーダーの詳細を公開すべきとのとんでもない認識を示しています。

まとめ

韓国側はレーダー照射をしていないという当初の立場からは変化がありませんが、韓国海軍の公式発表では、意図的なレーダー照射がなかったことを説明するために以下の言い訳をしています。

 

① 遭難船捜索のたためにレーダー照射してしまったとの主張

② P1哨戒機が艦艇の上空を飛行するなどの危険な低空飛行を行った

③ P1哨戒機からの無線通信の感度が弱く聞き取れなかった

④ レーダーは使用していないが、付随している光学カメラは使用した

 

今回の動画を通じて、偏見なしにクリアな目で見れば、①、②、③については韓国の主張が嘘であったことが明らかになりました。

 

しかし、レーダー照射の有無を示す最も大事な④については、これまでの日本側の主張の正当性と韓国側の嘘を比較すれば、この動画を見てレーダー照射を受けたと判断するのが合理的な思考ですが、④は周波数を示さないと客観的に指摘することが不可能なこともあり、認めない人もいます。

 

情報保全の観点から周波数を公開できないことを知っている韓国側は、日本が「軍事情報を公開することはありえない」と見切っているため、全く非を認める姿勢はなく、火器管制レーダーの周波数の特性を一つも公開していないから、レーダーの詳細を公開すべきとのとんでもない認識を示している状況です。

 

問題の所在でも指摘したように、火器管制レーダー照射は攻撃のシミュレーションであり、また、海上衝突回避規範(CUES)の規定に抵触する国際条約違反でもあります。

 

加えて、今回の事案を有耶無耶にしてしまうと、そもそも中国の火気管制によるレーダー照射を受けて結んだCUESの意義がなくなってしまい、韓国のせいで中国がやりたい放題になってしまうかもしれない懸念もあるので、日本としては、この合意が有名無実化しないためにも韓国に謝罪と再発防止を求める必要性があります。

 

周波数などを提供すると日本の電波収集能力が明らかになってしまいますので、どうにかこれを避ける形で韓国側に非を認めさせて幕引きしてもらいたいところです。

 

今回のような事実関係を自分で確認して判断できるようになるので、韓国というだけで毛嫌いしないで韓国語学ぶのはオススメです

 

【韓国語能力検定6級に独学で合格した韓国語の勉強法】どれくらいの期間で6級レベルに到達できるか?

 

最近の日韓のレーダー照射問題を巡る韓国側の常軌を逸した行動や2018年の韓国国防白書における記述の変化を見ていると、韓国についても潜在的な脅威としての視点を忘れてはいけないと思います。

 

日本を射程に収める韓国のミサイルについて知っていますか?

国際情勢カテゴリの最新記事