犬の登山は法律で禁止されている?感情論による賛成・否定ではなく論理的に考察

犬の登山は法律で禁止されている?感情論による賛成・否定ではなく論理的に考察

登山スタイルでいつも賛否両論となるのが「犬連れの登山」です。

 

この問題は、賛成派と反対派とはっきりわかれており、どちらも感情論で自らの正しさ主張しており、なかなか評価が難しい問題でもあります。

 

「犬 登山」などと検索すると、犬との登山を禁止している法律はないと説明するサイトしか表示されませんが、果たして本当に法律で規制された行為ではないのでしょうか?

 

以下、この点について、感情論による賛成・否定ではなく論理的に考察していきます。

 

私自身は、登山好きであるのみならず、柴犬愛好家でもありますので、どちら派というスタンスはなく中立です。

国立公園と国定公園について

考察の前提となる国立公園と国定公園について簡単に概説します。

国立公園は日本全国に34か所

国立公園とは、環境省によると、

「日本を代表するすぐれた自然の風景地を保護するために開発等の人為を制限するとともに、風景の観賞などの自然に親しむ利用がし易いように、必要な情報の提供や利用施設を整備しているところであり、環境大臣が自然公園法に基づき指定し、国が直接管理する自然公園」です。

環境省のホームページによると、日本全国に34か所あります。

国定公園は日本全国に56か所

国定公園は、国立公園に準ずる景勝地として、指定された自然公園です。

自然公園法に基づき、環境大臣が指定することは国立公園と同じだが、国定公園は都道府県が管理します。

 

環境省が発行している環境白書によると、下図の赤丸で示すように日本全国に56か所あります。

犬の登山禁止に関連する「自然公園法」と「特別保護地域」

次に、犬の登山禁止に関連する自然公園法と特別保護地域について見ていきます。

自然公園法と環境省の見解

自然公園法で明示されている犬の登山に関する部分について見てみると、

 
(国立公園と国定公園の)特別保護地区内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあっては環境大臣の、国定公園にあっては都道府県知事の許可を受けなければしてはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為はこの限りでない。
動物を放つこと(家畜の放牧を含む)
 
 
この法律についての「Q&A(よくある質問にお答えします)」が、環境省のホームページに掲載されています。
 

リードをつけてあれば、ペットの持ち込み(犬連れ登山等)はしても良いのでしょうか。

罰則の対象にはなりませんが、地域のマナーは尊重してください。

今回の改正により規制される行為は「動物を放つこと」であり、「持ち込むこと」を罰則つきで禁止するものではありません。

しかし、国立・国定公園の山岳部などでは、以前より他の公園利用者や野生動物への配慮からペットの持ち込みの自粛を要請している地域もあります。今回の改正により、このような取扱いが変わるものではありませんので、以前同様、御理解と御協力を御願いいたします。

なお、マナーの問題に留まらず、ペットを連れての公園利用を罰則をもって制限する必要が生じた場合は、自然公園法第15条に基づく利用調整地区の指定等により対応することが考えられます。

 

これを読んでどう感じたでしょうか?

法律で規制されているのは「動物を放つこと」?

この記事を書くに当たり軽く調べた時にヒットした記事の中には、「原則としてご遠慮ください」とされているので法律で禁止された行為ではないから、愛犬と登山することは周囲への配慮をすれば問題ないとしていた方も数多く見受けられました。

 

というか、法律で規制されているのは「動物を放つこと」であり、「持ち込むこと」は禁止されていないと解釈するサイトしか検索にヒットしなくて心底驚きました。

 

私自身、柴犬を飼っていますし、実際に登山にも連れていくので犬の登山は禁止されていないと主張したい気持ちは当然理解できます。

犬を「持ち込むこと」は罰則が付かないが禁止

しかし、環境省のホームページに掲載されている見解を素直に読むと、「犬を放つこと」は罰則付きで禁止、「持ち込むこと」は罰則が付かないが禁止ということで、いずれも法律で禁止された行為とも読めます。

 

解釈論として、動物を放つことを罰則付きで規制していて、動物を帯同させること、すなわち犬との登山は禁止されていないと説明するサイトが多いですが、環境省の見解及び法律の趣旨に鑑みれば、罰則は無いものの、規制されている行為と捉えるのが妥当であるでしょう。

 

環境省や自治体の独断により、人間だけよくて犬だけ禁止されているのは愛犬家から見れば理不尽に感じる気持ちも分かりますが、文句があるのなら頑張って勉強して官僚になって自分が法律を作る側の人間になって尽力するしかありません。
 

国立・国定公園の特別保護地区に限定して犬との登山が禁止

ただし、この法律は、あくまでも国立・国定公園の特別保護地区に限定して規制している法律であるので、禁止されているといっても目くじらを立てる必要はありません。

 

では、この法律で規制されるエリアはどれくらいだと思いますか?

 

環境省が発表しているデータによると、犬との登山が制限される特別保護地域は、日本全国で6.3%しかありません。

ここが最も重要なところですが、ここの説明が環境省の方からしっかりとされていなかったことから、犬の登山についての賛成派と否定派の感情論での主張の応酬が現在まで行われているというのが現状だと私は解釈しました。

秩父多摩甲斐国立公園の特別保護地域は3%程度

例えば、私の大好きな三峯神社・三峯山がある「秩父多摩甲斐国立公園」を例に出して考えると、

 

三峯神社(埼玉県秩父市)

下図のオレンジ色で示す国立公園全体のわずか3%程度のエリアについて規制、すなわちこの区域における犬との登山を禁止しているということになります。

富士箱根伊豆国立公園の特別保護地域

また、富士山がある「富士箱根伊豆国立公園」についても例示すると、さすがに富士山は5合目以上の全てのエリアで登山が禁止されています。

 

しかしながら、こうしたケースは稀であり、特別保護地域に該当する登山自体が禁止される山は少ないと言えます。

 

犬との登山が制限される特別保護地域は日本全国で6.3%

このように見てくると、禁止されているとしても、犬との登山が制限される特別保護地域は、日本全国でわずが6.3%に過ぎないだけでなく、山全体が規制されている訳ではなく、自然環境保護のために一部のエリアのみを対象に規制しているわけであるので、この程度は受忍してもいいのではないかと思います。

 

ただし、犬との登山が禁じられる地域は、国立公園や国定公園の特別保護地区だけであり、国立公園全体ではないにもかかわらず、山を管理する側の人が国立公園全体が禁止だと誤って解釈している人が多いのは問題であると言わざるを得ません。

 

実際には、国立公園の特別保護地域しか禁止されていないが、実際に、登山に行くとペットとの登山は禁止されていますという看板を目にした方もいるでしょう。

 

国立公園に占める特別保護地区の面積は13%

国立公園に占める特別保護地区の面積は13%です。

他方で、上述したように、私のような関東在住の登山愛好者がよく行く「秩父多摩甲斐国立公園」の特別保護地区の面積はわずか3%ですが、山に標識も存在しないので、どこが特別保護地区かは一般の登山者にはわからないのは問題であり、こうした点は改善の余地があると強く思うし、早急に対処するべき問題です。

 

どこからどこまでが特別保護地域なのかを、例えば登山口に地図表記のわかりやすいものを案内板のようにして設置するとか、「ここから先は特別保護地域です」といったような立て看板を設置するとかの簡単な処置をすればいいだけであるのに、こうしたことすらやっていないのは環境省の怠慢でしょう。

高尾山で犬連れの登山が問題に?

「フンの処理をすれば愛犬を山に連れていくことに問題はない」。飼い主の言い分も一理あるが、仮に愛犬が登山道の脇におしっこをかければ、山野草の生育に悪影響を及ぼすことぐらいは分別のある大人なら分かるなどと犬連れの登山に厳しい見解を示している。

 

高尾登山電鉄の公式ホームページによる東京都の見解もミスリーディングではないでしょうか?

 

これは典型的な解釈の間違いと言わざるを得ません。

 

Q1 高尾山内へペットの持ち込みはできますか?

A. できます。しかし、高尾山へお越しになった方は犬好きな方ばかりとは限りません。
必ず、リードをつけ、フンの始末はすべて各自にてお持ち帰りいただき、ゴールデンウィークや紅葉シーズン、正月は登山道も大変混雑いたしますので、十分ご注意いただくようお願いいたします。

東京都によれば、高尾山を含め自然公園へのペットの持ち込みについて、法的には動物等の持ち込みは禁止されておりませんが、自然生態系に及ぼす影響を考慮すると、ペットの入山はできる限りご遠慮いただければとのことです。

 

自然公園へのペットを放つこと及び持ち込みについて、法的には動物等の持ち込みは禁止されていないと説明されていますが、これまで見てきたことを踏まえると、「特別保護地域」に限定しては禁止されていると解釈するのが妥当でしょう。

 

当然ですが、高尾山自体への登山はなんの問題もありません。

 

ちなみに、ここで明示されている自然公園とは、「国立公園、国定公園、都道府県立自然公園」のことであり、高尾山は都道府県立自然公園に該当します。

 

まとめ

犬との登山についてどうのように感じましたか?

 

犬との登山については、解釈論として、動物を放つことを罰則付きで規制していて、動物を帯同させること、すなわち犬との登山は禁止されていないと説明するサイトが多いですが、環境省の見解及び法律の趣旨に鑑みれば、罰則は無いものの、規制されている行為と捉えるのが妥当であるでしょう。

 

ただし、この法律は、あくまでも国立・国定公園の特別保護地区に限定して規制している法律であるので、禁止されているといっても、環境省が発表しているデータによると、犬との登山が制限される特別保護地域は、日本全国で6.4%しかなく、目くじらを立てる必要はありません。

 

国立・国定公園に属さない山についてはそもそも規制の対象ではありませんので、そもそも問題にすらなりません。

 

ここが最も重要なところですが、ここの説明が環境省の方からしっかりとされていなかったことから、犬の登山についての賛成派と否定派の感情論での主張の応酬が現在まで行われているというのが現状だと私は解釈しました。

 

また、犬との登山が禁じられる地域は、国立公園や国定公園の特別保護地区だけであり、国立公園全体ではないにもかかわらず、国立公園全体が禁止だと誤って解釈している人が多いのは問題であると言わざるを得ません。

 

他方で、当然ながら、法律以外にもマナーやルール、犬のしつけなどの問題がありますので、誰もが犬と一緒に山登りが出来るというわけでないと思っていますし、推奨しているわけでもありません。

 

そもそも、こうした規制が生まれたのは、マナーの悪い犬連れ登山が数多くいて環境に影響を及ぼしつつあった、あるいは及ぼしていたたことがあると考えるべきであるので、一部の特別保護地区に限っては本当に生態系を守る必要があるので感情論で反論することなく、自分たちの行動を省みて冷静に考える必要があるのではないでしょうか?

 

今回の記事を書く中で、犬と登山する人は、最低限こうした知識を知る必要があると感じました。

 

教養カテゴリの最新記事